「相続させる」と「遺贈する」の違い
遺言書作成サポート
遺言により自らの財産を親族等に引き継ぐ場合、「~に相続させる」や「~に遺贈する」という文言を使用します。
どちらも遺言者が死亡した場合に、自身の財産を譲り渡す意図で使用する文言ですが、使い方を間違うと後々財産を引き継いだ人が困ることになる場合があります。
こちらの記事では、この2つの文言の違いについてみていきたいと思います。
「相続させる」と「遺贈する」
「相続」とは、ある人が死亡したときにその人の財産を一定の関係にある人(配偶者や子などの親族)に引き継ぐことをいいます。
この一定の関係にある人を法定相続人といいます。
ですから「相続させる」のは法定相続人に対して使う文言であり、法定相続人以外の人に「相続させる」と書くことはできません。
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一方、「遺贈」とは、遺言によって財産を誰か(受遺者)に譲ることをいいます。
その相手方は法定相続人である必要はありません。
法定相続人以外の知人や友人、または団体などに自分の財産を譲りたいときに「遺贈する」という文言を使います。(法定相続人に対しても「遺贈する」と書くことはできます。)
法定相続人に対してはどちらの文言も使うことができますので、どちらを使ってもいいようなものですが、遺言者が亡くなった後の相続手続の段階で法律上の扱いに大きな違いがありますので、注意が必要となります。
それでは、どのような違いがあるのかを見ていきたいと思います。
不動産の登記手続きの時
「相続させる」遺言で不動産を譲り受けた場合は、相続人が単独で所有権移転の登記申請をすることができます。
一方、「遺贈する」遺言で不動産を譲り受けた場合は、受遺者(不動産を譲り受けた人)は所有権移転の登記申請を単独では行えず、他の法定相続人全員と共同で行う必要があります。
相続人間の争いがあるときなど他の法定相続人の協力を得ることができない場合は登記手続きを進めることができなくなることになります。
また、不動産の所有権を他人に主張するためには、登記が必要と法定されています(他人が先に登記をしてしまえば、その人に対して所有権を主張できなくなる。)。
「相続させる」遺言の場合は、登記がなくても他人に所有権を主張することができます。
しかし、「遺贈する」遺言の場合は、登記がなければ所有権の主張をすることができないとの判例(最判昭和39.3.6)があり、遺贈された不動産を所有権の移転登記をする前に借金のかたに差し押さえられた場合などは、所有権を主張することができなくなってしまいます。
農地の取得時
通常、農地の所有権を移転するためには、農業委員会という行政機関の許可が必要となります。(農地法3条1項)
しかし、「相続させる」遺言により農地を相続した場合、この許可が不要で、即移転登記をすることができます。
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一方、「遺贈する」遺言により農地を譲り受けた場合(特定遺贈の場合、包括遺贈は除く)、所有権移転登記の申請には農業員会の許可が必要になります。
受遺者が農業従事者でないときはその許可が下りず、したがってその農地の所有権の移転ができないことになります。
(ご参照:『包括遺贈と特定遺贈の違い』)
借地権・借家権の取得時
遺言者が土地を借りている場合や家を借りている場合、その借地権や借家権も遺言で譲り渡すことがでます。
「相続させる」遺言の場合は、この借地権や借家権を譲り受けるのに賃貸人の承諾は必要ありませんが、「遺贈する」の遺言の場合は、賃貸人の承諾が必要となります。
まとめ
以上、「相続させる」と「遺贈する」の違いについて説明させていただきました。
財産を法定相続人に譲り渡す場合、「相続させる」と書くことも「遺贈する」と書くこともできますが、相続手続時の煩雑さが大きく変わりますので、遺言作成時の言葉の使い方には注意が必要です。
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この記事を書いた人
みなとまち行政書士事務所の可児(かに)と申します。
旅行が好きで、ふらっと出かけることもあります。昔は家族でよく出かけていましたが、最近は妻も娘も相手にしてくれなくなったので、一人旅を楽しんでおります。サービスエリアで1人ソフトクリームを食べているおじさんを見たら、たぶんそれはワタシです。