限定承認について
相続サポート
相続が開始した場合に、相続人は被相続人(亡くなった人)の財産を受け継ぎます。
「財産」と聞くと、預貯金や不動産、車や骨とう品などのプラスの財産をイメージしがちですが、借金や債務(法律上の何かをすることの義務)などのマイナスの財産も「財産」に含まれます。
被相続人(亡くなった人)にプラスの財産もあるがマイナスの財産もあり、どちらが多いか不明であるというケースがあります。
民法は、このようなケースに対応できるよう「限定承認」を規定しています。
こちらの記事では、この限定承認についてみていきたいと思います。
限定承認とは
「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる」(民法922条)と規定されています。
少し解りにくい書き方をされていますが、要約すると被相続人(亡くなった人)にプラスとマイナス両方の財産があった場合、相続人はプラスの財産で得た価額の範囲でのみ借金の返済をすればよいということです。
限定承認はどこにする?
限定するときは、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述(申出)します。
申述に必要な費用
収入印紙800円分(申述人1人につき)
連絡用の郵便切手(申述先の家庭裁判所に確認してください。)
用意する書類
申述に必要な書類は、相続人の相続順位により若干異なりますが、全てに共通するのは以下の書類です。(詳しくは申述先の家庭裁判所に確認してください。)
- 申立書
- 標準的な申立添付書類(当事者目録、土地遺産目録、建物遺産目録、現金・預貯金・株式等遺産目録)
- 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申述人全員の戸籍謄本
(リンク:裁判所 相続の限定承認の申述)
限定相続は使いづらい
限定承認は相続人にとって都合の良い制度のように見えますが、以下の理由により使い勝手が悪く実際に利用されることも少ない制度です。
- 限定承認は、相続人全員が共同して行う必要がある。
- 清算手続きが面倒である。
- 税制面で不利である。
限定承認は、相続人全員が共同して行う必要がある
限定承認は相続人全員が共同で行う必要があります。
共同相続人のなかに日頃付き合いのない相続人がいる場合や今まで顔を合わせたことのない相続人がいる場合でも、その人と足並みを揃える必要があるということです。
又、相続人のなかの一人でも単純承認することを選択した場合、この限定承認はできなくなります。
清算手続きが面倒である
官報告示、債権者対する催告などの手続きを決められた期間内にする必要があります。
これら広告期間の終了後に限定承認者または相続財産管理人は、債権者や受遺者に弁済(借金の返済など)をするために、相続財産を競売にかけるなどして換価処分(現金化)をする必要があります。
税制面で不利である
限定承認をしたときは、「相続開始時に、その時の時価で、被相続人から相続人に対して相続財産の譲渡があったものとみなす。」とされています。
相続財産のなかに不動産がある場合、相続時点の評価額が取得価格より上がっているときは、実際には売却していないにも関わらず税金が課せられることになります。(通常は、実際に売却しなければ譲渡所得税は課せられません。)
※一般論です。税金に関する詳細は税理士にお問合せください。
限定承認できる期間
限定承認できる期間は法定されており、民法では「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内にしなければならない。」(915条1項)と規定されています。
この3カ月が経過してしまうと「単純承認」したものとみなされるため、負債などのマイナスの財産がプラスの財産より多かった場合でも、その返済義務が生じますので注意が必要です。
この3カ月の間にどのような形で相続するか決定できない場合は、家庭裁判所に申立てをすることで、期間を延ばしてもらうことも可能です。その申立ては3カ月以内にする必要があります。
まとめ
以上、限定承認について説明させていただきました。
限定承認は一見、相続人に都合のよい制度のようにも思えます。でも、よくよく制度の中身を見てみると相続財産の内容によっては、必ずしもベストな選択ではない場合もあります。利用するには慎重な検討が必要でしょう。
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この記事を書いた人
みなとまち行政書士事務所の可児(かに)と申します。
旅行が好きで、ふらっと出かけることもあります。昔は家族でよく出かけていましたが、最近は妻も娘も相手にしてくれなくなったので、一人旅を楽しんでおります。サービスエリアで1人ソフトクリームを食べているおじさんを見たら、たぶんそれはワタシです。