相続における『寄与分』とは
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どなたかが亡くなり相続の開始となった場合で、故人が遺言をのこさなかった場合は遺産分割協議により遺産分割をします。
この場合、遺産分割の割合の目安は法定相続分を参考にするのが一般的だと思います。
しかし、相続人の中のどなたかが、被相続人(亡くなられた人)の生前にその人のお世話に尽力したり、その人の事業の成長に貢献した場合などがあった場合、その人の相続分が法定相続分のみであれば相対的に不公平となる場合があります。(つまり、「もう少し、沢山もらえてもいいんじゃない?」という不満を生じることもあると思います。)
この不公平を是正するために民法は「寄与分」を認める規定を定めています。
こちらの記事では、この寄与分についてみていきたいと思います。
「私のあの行為は、寄与分にあたるのだろうか?」などの疑問をお持ちの方のご参考になれば幸いです。
寄与分(きよぶん)について
「寄与(きよ)」とは、「社会や人のために役に立つこと。貢献。」とあります。
相続における寄与とは、被相続人(故人)のために力をつくし、面倒をみたということになるのでしょうか。
民法では、寄与分が認められる要件として以下の3つを定めています。
- 被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付があった場合
- 被相続人の療養看護をしていた場合
- 被相続人の財産の維持又は増加に貢献した場合
ただ、生前に故人の面倒をみた人全員に寄与分が認められるわけではありません。
寄与分は、「特別の寄与」がある場合に認められることが必要で、以下の3つの要件を満たしていることが必要だといわれています。
- 報酬が発生しないものであった
- 1年以上の長期間に渡って従事したものであった
- 片手間に行っていたものではない
例えば、被相続人の入院中に通常の範囲のお世話をしたのみでは「特別の寄与」には当たりません。
また、被相続人の事業を手伝ったとしても(手伝ったことの報酬として)給料をもらっていた場合などは「特別の寄与」には当たらないということになります。
寄与分の種類
寄与分には下記の5つに分類されるといわれております。
- 家事従事型
- 療養看護型
- 金銭等出資型
- 扶養型
- 財産管理型
家事従事型
被相続人が経営していた会社に従事し、会社の業績向上に貢献した場合がこれにあたります。
ただ、報酬をもらっていた場合は特別の寄与にはあたりません。
療養看護型
相続人が被相続人の療養看護を行っていた場合で、その行為が通常発生しうる付き添い看護の費用を大幅に軽減することができた場合などがこれにあたります。
金銭等出資型
相続人が自らの財産をもって被相続人の借金の返済にあてた場合などはこれにあたります。
他の類型に比べ寄与分は認められやすいといわれています。
扶養型
相続人が被相続人を長期間に渡って扶養していた場合などがこれにあたります。
ただ、夫婦はお互いに扶養する義務を負っており(民法 752条)、また直系血族及び兄弟姉妹もお互いに扶養する義務を負っておりますので(民法 877条)、特別の寄与と認められるハードルは高いものと考えられます。
財産管理型
被相続人が複数の不動産を所有していた場合で、その不動産の管理業務に長年従事していた場合などがこれにあたります。
寄与分制度の注意点
「包括受遺者」は、相続人と同一の権利義務を有すると規定されてますが(民法990条)、寄与分制度に関しては除外されているというのが通説です。
つまり、包括受遺者は寄与分の主張をすることができないと考えられています。
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「代襲相続人」は、相続人ですので寄与分を主張することができます。
被代襲者(代襲相続人の親)が生前に行った寄与行為についても寄与分を主張することができます。
また、代襲者自身が代襲相続人になる前の寄与行為についても寄与分を主張することができるというのが通説です。
寄与分はどこで主張する?
寄与分の主張は、まず遺産分割協議においてします。
自らの行為が故人の生前に故人に対して「特別の寄与」があったと考えられるのであれば、遺産分割協議においてその主張をします。
この主張を他の相続人が認めてくれた場合には、寄与分を加味した遺産分割を行うことになります。
ただ、寄与分を認めてもらうには、確固たる証拠の提示をする必要があるのに加え他の相続人の寄与分を認めるということは、自分の取り分が少なくなるということになりますので、すんなりと認めてもらえないケースの方が多いと思います。
このような場合、他の理由で遺産分割協議がまとまらないときと同様に家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをし、そこで寄与分の主張をすることになります。
【ご参考】遺産分割調停とは
相続開始の後,遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割調停又は審判を申し立てることができます。
この調停は,相続人のうちの1人もしくは何人かがその他の相続人を相手方として申し立てるものです。
調停では,当事者の双方から事情の聴取があり、必要に応じて資料等を提出が必要となます。また、遺産についての鑑定が行われることもあります。
調停の中で各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向が聴取され、調停員による解決案の提示、解決のための助言があり合意を目指して話し合いが進められます。
話合いがまとまらず調停が不成立になった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官により遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情が考慮され審判されることになります。
申立てることができる人
- 共同相続人
- 包括受遺者
- 相続分譲受人
申立て先
相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所もしくは当事者が合意で定める家庭裁判所
【申立てに必要な費用】
- 被相続人1人につき収入印紙1200円分
- 連絡用の郵便切手
申立てに必要な書類
- 申立書及びその写し(相手方の人数分)
- 標準的な申立添付書類(土地遺産目録、建物遺産目録、、現金・預貯金・株式等遺産目録、当事者目録)
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)が死亡している場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の住民票または戸籍附票
- 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書,預貯金通帳の写し又は残高証明書,有価証券写し等)
寄与分がある場合の計算方法
寄与分がある場合の相続分の計算はどのようなものか見ていきたいと思います。
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夫Aが死亡して、相続人として妻Bと子Cと子Dがいる場合で、資産は1,000万円であったとします。
子Dが父親の療養看護をしたということで、他のみんなが100万円を寄与分として認めました。
この場合の計算は以下のようになります。
みなし相続財産:1,000万円 - 100万円 = 900万円
- 妻B:900万円 × 1/2 = 450万円
- 子C:900万円 × 1/2 × 1/2 = 225万円
- 子D:900万円 × 1/2 × 1/2 + 100万円 = 325万円
法改正で相続人でない親族の「特別の寄与」も認められるようになりました
2019年7月に施行された民法の改正で、相続人ではない親族(例えば子の配偶者など)が被相続人の介護・看病などをし、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献があった場合は、「特別の寄与」があったとして、相続人に対し金銭の請求ができるようになりました。
改正以前は、「特別の寄与」が認められるのは相続人に限定されていました。
しかし、それでは故人に対して尽くした相続人でない親族に不公平という議論があり今回の改正となりました。
まとめ
以上、相続における寄与分について説明させていただきました。
ご自身では、生前故人に尽くしたという思いがあっても、それを「特別の寄与」という形で他人に認めてもらうのは大変困難なことだと思います。
書類や記録などで目に見えるものをきっちり残しておくことが大切です。
【相続手続き】は、みなとまち行政書士事務所にお任せください
みなとまち行政書士事務所では以下のような相続手続きのサポートをさせていただきます。
戸籍の収集をいたします。
法定相続人を確定するために一定の範囲内の親族の戸籍を収集することになります。
当事務所がお客様に代わって戸籍の収集並びに「法定相続情報証明書」の作成をいたします。
(ご参照:『法定相続情報証明制度について』)
遺産分割協議書(案)を作成いたします。
この遺産分割協議書(もしくは、遺言書)がないとその後の手続きを進めることができません。
ご要望があれば相続人の間に立って遺産分割協議の取りまとめをさせていただきます。
(ご参照:『遺産分割協議について』)
預貯金の払い戻し等、相続手続きを行います。
この記事を書いた人
みなとまち行政書士事務所の可児(かに)と申します。
旅行が好きで、ふらっと出かけることもあります。昔は家族でよく出かけていましたが、最近は妻も娘も相手にしてくれなくなったので、一人旅を楽しんでおります。サービスエリアで1人ソフトクリームを食べているおじさんを見たら、たぶんそれはワタシです。