遺産分割協議について
相続サポート
故人が遺した財産を、どのように遺された者に配分するのでしょうか?
まず、第一に尊重されるのが、故人の遺志すなわち遺言となります。遺言書に書かれた内容に従い、受取人に指定された人が遺産を相続することになります。
では、遺言書がない場合はどのように配分するばよいのでしょうか?
遺言書がない場合や遺言書が無効であった場合は、遺産分割協議を行い、その協議で遺産の分割方法を決めます。
こちらのページでは、遺産分割協議について詳しくみていきたいと思います。
1つ目のポイント 協議は全員参加で
1つめのポイントは法定相続人が全員参加して行うということです。
全員参加で協議を一行うことが必要で、1人でも欠けた協議は無効となってしまいます。ですから、遺産分割協議を始める前に故人の法定相続人の特定をキッチリと行う必要があります。
ところで、「協議」というと全員が一同に会し、顔を突き合わせて話し合いをするというような印象を受けると思いますが、必ずしも一同に会する必要はなく、メールや書面のやり取りなどで執り行っても構いません。重要なことは、法定相続人全員が参加し、皆が納得するということです。
注意点として、相続人に未成年者がいる場合、その未成年者に特別代理人という立場の人を付け、その特別代理人が未成年者を代理して遺産分割協議に参加するということです。
法律上、未成年者には単独で法律行為をする能力がないとされているため、その未成年者に代わって法律行為(相続に際しては遺産分割協議)をする特別代理人が必要になるというわけです。
一例ですが、父母と未成年の子供が2人の家庭において、父親が亡くなった場合で遺言がなかった場合、母親と子供による遺産分割協議が必要になりますが、この時、母親と子供の利害が必ずしも一致するとは限らないため、母親は子供の特別代理人になることはできません。ですから、それぞれの子供ついて親族の誰かに(必ずしも親類でなくてもいいのですが)子供の特別代理人になってもらい、その特別代理人と遺産分割協議を執り行うということになります。
(ご参照:『特別代理人について』)
2つ目のポイント 結果を書面に残す
もう1つのポイントは、協議の結果を文書化し、相続人全員が署名、捺印するということです。
署名、捺印することで、協議内容に同意したことを示します。
この書面化したものを「遺産分割協議書」といいます。
遺産分割協議書の例
遺産分割協議書
被相続人 大阪太郎(2019年1月1日死亡)の遺産について、共同相続人である大阪花子、大阪一郎及び大阪次郎は、協議の結果、次の通り遺産分割し、取得することを決定した。
- 相続人 大阪花子が取得する財産
- 相続人 大阪一郎が取得する財産
- 相続人 大阪次郎が取得する財産
- ○○銀行○○支店からの借入金(相続開始日の残高340万)は、相続人大阪一郎が負担するものとする。
⑴土地
大阪府大阪市中央区○○町○○丁目〇番地 宅地 200平方メートル
⑵建物
大阪府大阪市中央区○○町〇丁目 家屋番号××
木造瓦葺2階建 床面積80平方メートル
⑴預貯金
○○銀行○○支店 被相続人大阪太郎名義の普通預金
口座番号××
⑵株式
株式会社○○○○の株式 一万株
⑴預貯金
○○銀行○○支店 被相続人大阪太郎名義の普通預金
口座番号××
上記の通り、遺産分割の協議が成立したので、これを証するため本協議書を作成し、それぞれ署名・捺印し、各自1通を保有するものとする。尚、本協議に記載なき遺産・債務並びに後日判明した遺産・債務は相続人全員で別途協議して定めるものとする。
令和2年〇月〇日
大阪市中央区○○丁目〇丁目〇番地
大阪 花子 ㊞
大阪市北区○○町〇丁目〇番地
大阪 一郎 ㊞
奈良県奈良市○○町〇丁目〇
大阪 次郎 ㊞
遺産分割協議書を求められる場面
遺産分割協議書を作成する目的の1つに後の相続人同士の争いを防ぐことがありますが、その他にも相続手続きの様々な場面で「遺産分割協議書」の提出を求められます。
以下が主に「遺産分割協議書」の提出が求められる場面です。
相続登記
相続により不動産の所有権の移転登記を行う場合、法務局に「遺産分割協議書」の提出が必要になります。
預貯金の払い戻し
次に「遺産分割協議書」が必要になるのは、預貯金の払い戻しを受けるときです。
金額によっては、提出が不要である場合がありますので、事前に金融機関に問合せをしてください。
自動車の名義変更
遺産の中に自動車が含まれていることがありますが、この自動車の名義を変更する場合にも、「遺産分割協議書」が必要になります。
株式の名義変更
遺産の中に株式が含まれている場合、この株式の名義を変更する場合にも、「遺産分割協議書」が必要になります。
相続税の申告
遺産の評価額が相続税の基礎控除を超える場合には相続税の申告と納税が必要になります。
このとき「遺産分割協議書」を提出する必要があります。提出しなければ、納税額の負担が法定相続分に応じた割合になってしまうため(遺産分割協議により定めた相続分と異なる割合になってしまうため)、場合によっては必要以上の納税をしなければならないことになります。
また、配偶者の相続税の控除や小規模宅地の特例などの控除を受ける場合も「遺産分割協議書」の提出が必要になります。
遺産分割協議証明書について
遺産分割協議書と同じ役割を果たす書面に「遺産分割協議証明書」があります。
遺産分割協議書は、1枚の書面に相続人全員が署名・捺印をする必要があります。
この方法で問題となるのが、相続人の人数が多く、郵送で書面を受け渡しする場合です。
書面の紛失や汚損の恐れがあり、また誰かのところで留まってしまうことも考えられます。
この相続人の人数が多い場合などに「遺産分割協議証明書」を用います。
遺産分割協議証明書については、下記のリンク先をご参照ください。
(ご参照:『遺産分割協議証明書について』)
まとめ
- ✔ 遺言がない相続では遺産分割協議を行うことが必要です。
- ✔ 親は未成年者の子を代理することができない。
- ✔ 相続手続きの様々な場面で遺産分割協議書が求められる。
- ✔ 相続人の人数が多い場合は、遺産分割協議証明書が有用です。
【相続手続き】は、みなとまち行政書士事務所にお任せください
みなとまち行政書士事務所では以下のような相続手続きのサポートをさせていただきます。
戸籍の収集をいたします。
法定相続人を確定するために一定の範囲内の親族の戸籍を収集することになります。
当事務所がお客様に代わって戸籍の収集並びに「法定相続情報証明書」の作成をいたします。
(ご参照:『法定相続情報証明制度について』)
遺産分割協議書(案)を作成いたします。
この遺産分割協議書(もしくは、遺言書)がないとその後の手続きを進めることができません。
ご要望があれば相続人の間に立って遺産分割協議の取りまとめをさせていただきます。
(ご参照:『遺産分割協議について』)
預貯金の払い戻し等、相続手続きを行います。
この記事を書いた人
みなとまち行政書士事務所の可児(かに)と申します。
旅行が好きで、ふらっと出かけることもあります。昔は家族でよく出かけていましたが、最近は妻も娘も相手にしてくれなくなったので、一人旅を楽しんでおります。サービスエリアで1人ソフトクリームを食べているおじさんを見たら、たぶんそれはワタシです。